グロム・ザザvsヒカルド・モラエス

本日も昔の総合格闘技についてのお話。

知人にこの試合どう?ということで視聴する。この試合は実はリングスの設立10年記念DVDに収録されていて、このDVDを持っているので観てはいるのだが現在の格闘技視点で観たことはない。

この試合が行われたのは1997年でルールとしては20分1本勝負でオープンフィンガー着用。えらく試合時間が長い上にラウンド制ではないが、当時の日本の格闘技界はUFC登場以降のいわゆるグレイシーショックや「なんでもあり」のバーリトゥードでさまざまな変革が求められた時期。リングスはまだUWFルールが主流で、新たな格闘技大会UFCなどを意識したルールを模索中だった。そんな中組まれたのがこのルール(VTルール)でのザザvsモラエス。「世界一過酷なルール」を謳っていたリングスのKOKルールもまだ世に出ていない。

一応ふたりのキャリアを説明しておくと、

ザザはリングス・グルジアのリングス常連。グルジア(ジョージア)の民族格闘技チダオバの使い手とのことだが、本職はレスリングフリースタイルの選手。フリースタイルレスリングソ連選手権4連覇、ワールド・カップ優勝という戦績を残す。アトランタ五輪にもグルジア代表として出場している。ゆえにタックルやリフトアップなど豪快な技を見せてくれるものの、打撃もサブミッションも秀でている訳ではないので地味である。本名ザザ・トケシェラシヴィリ。グロムは「雷」の意味。

一方のモラエスはブラジルの柔術家。Wikipediaを見るとチーム・ノゲイラ所属とあるが、アントニオ・ホドリゴがこのプライベートチームを設立したのはブラジリアン・トップチーム離脱後なのでそれ以前の所属は不明。リングス参戦はこれが2度目で、初来日&初戦は1年前の山本宜久戦。これもVTルールで、開始わずか46秒で勝利(パンチ連打)。のちのキャリ的にはリングスで金原弘光、PRIDEでマーク・コールマンやアレクサンダー・エメリヤーエンコと対戦している。またヒカルドンのリング名(アントニオ猪木が命名したらしい)で、新日本プロレスのアルティメットクラッシュで高阪剛と、U-STYLEでU系プロレスルールでジェームス・トンプソンと戦っている。

という具合である。

試合展開はざっくり言うと、最初にザザがタックルでテイクダウンしたところをパウンドで攻撃した後に、モラエスのクロスガードで15分くらい膠着状態となり試合終了。最初の攻撃が評価点となり、ザザの判定勝ち。

いまのMMA(総合格闘技)ではあり得ない展開というか、UFCなどで採用されているユニファイドルール(日本では修斗やパンクラスが採用)のもとではまずあり得ない。ユニファイドルール自体が見る側の楽しさ優先にしているので、膠着状態を排するためにクロスガードになったらパウンドか肘攻撃になるのがセオリー。まあ、当時は何もかも手探り状態だったから仕方ないと言えば仕方ない。

リングス・修斗・パンクラス・PRIDEと90年代に総合格闘技が隆盛になってから25年以上が経つ。その間様々なルールが生まれては消えていき、団体や大会も同様だった。前田日明がかつて「総合格闘技は時代のあだ花」と発言したことがあったが、かつて膠着状態が問題になりそれを改善したPRIDEが2007年にUFCに買収されて消滅した。現在世界の総合格闘技はさまざまな団体が割拠しており、アメリカではライバル団体としてBellator、東南アジアではONEがあるが、依然としてUFCの一強状態。

そのUFCも先般(2020年)のコロナ禍で大会決行を直前まで強気に発言していたものの、UFC放映権を持つESPNの親会社ディズニーにより中止を余儀なくされている(UFCのダナ・ホワイトはアメリカの法的執行が及ばない先住民インディアンのリザベーション=居留地での開催をほのめかしていた)。コロナウイルスという不可抗力の外的要因も加わり、これから総合格闘技はどこに向かうのであろうか・・・。

  

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